ここで、ご紹介してきた鉛筆をくわえるトレーニングについて、もう既定の期間を越えようとしていますが、まだ終わっていません。
もう一度、初めからご説明しますと、トランペットの演奏に必要な筋力のトレーニング方法として、鉛筆をくわえるという方法が昔からありました。しかし、その方法については、詳しいことはなかなかわからずに、我流で行い、その成果が上がらず、そのまま忘れていたということです。私が知ったのは、もう50年以上も前のことです。
そして、つい最近、週2回から3回しか練習しない方法で、効果的に練習する方法はないだろうか、もっと早い上達方法はないだろうかと考えていました。逆に考えて、毎日練習していると身につくものとは何かということを考えて見た場合、それは、一種の筋力のようなものが知らずに身についていくのではないだろうかと思ったわけです。そして、この鉛筆の方法を解説しているという本に偶然出会ったことをきっかけに再度チャレンジしたということです。
まずは、この本の内容は著作権の関係でそれほど詳しく書くことはできませんが、すべての過程を終えるのに10週間という期間が必要となっています。そして、私は間もなくこの10週を迎えようとしています。そして、着実に成果が上がっていると確信しているわけですが、その前に、もう少しこの方法のヒントとなることを書いていきたいと思います。(もちろん、興味を持ってご覧いただき、さらに前々回の記事でこの本を購入されようとしている方には不要なのかもしれませんが、そうでない方にも少し興味を持っていただけるように付け加えます。)
最初はごく短い時間、鉛筆をくわえるという単純な方法です。しかし、その方法は、私が想像していたものではありませんでした。決してあごの力で鉛筆を支えないことです。また、最初は鉛筆の長さは半分ぐらいのものから開始します。そして、ある時点から、フルサイズの鉛筆に変えていきます。また、この方法のポイントと思われるのが、顎を動かしてはいけないということです。どんなにつらくなっても顎は固定したままです。このことが結構、難しく、私にとっての新たな発見にもなりました。
つまり、それまで、高音に行くにしたがって、少し顎を出していたということです。なぜこうなったかというと、ある高名な日本のトランペット奏者がそうしているということで、顎を前に持って行っていいのだと思ったからです。特別理由があったわけではないのですが、真似したのです。たまに、これで音が出なくなることがありました。そして、何度か、このことに気づいて、顎が出ないようにしようとしたのですが、自然と、前に出てしまうということが癖になっていたのだと思います。逆に言うと、唇の筋力がないので、張力を出すために、そうせざるを得なかったと考えられるわけです。
そして、ある程度、筋力らしきものがついた今、いろいろな変化が出てきました。まず、筋力がない時には、高音にいくにしたがって、この張力を出すために、上唇につい力が入ってしまうということがあり、結構これがつまずきの原因になるものの、ほかの選択肢がないので、つまり筋力がないので、そうせざるを得ないという状況でした。これが、すっと晴れるような感じで、上唇に力を入れずとも、高音にアプローチできるようになったということです。正確には、上唇の先端に力を入れずとも、高音が出るようになったということです。逆に言うと、それだけ下唇と下あごを取り巻く筋力の支えというものが十分なものになったということも言えるのかもしれません。(この本のなかにも、下唇、下あごの使い方の重要性について触れた記述があります。)
そして、それは、タンギングなどの正確性にもつながり始めました。更に、舌の位置もさらに前方へと置くことが可能となりました。たぶん、これらのことも筋力がついて、可能になったことだと思います。
実践面では、練習の最初に音域を広げる練習をしますが、その時に、五線譜の上の実音のFまで到達するようになりました。ただ、これを常時、演奏に生かせるほどのものにするには、もっと練習と研究が必要になるのだろうと思います。『それしか出ないのに、大げさに言いやがって・・』とおっしゃってくれませんように。これでも、週2回、週3回の練習でやっとたどり着いた方法論の一つなんです。
思えば、中学生の3年ぐらいには、無理すれば、そのくらいの高さの音は出せました。しかし、それは、無理やり出せたということで、音とはいいがたいものでした。しかし、数十年ぶりに楽器を手にして以来、かすることもできない音になっていました。(つねり出すような音なら出ましたが、)
逆に言うと、私の仮説は間違いなかったということも言えます。今回のチャレンジは私に大いなる自信をもたらしました。その思いが強ければ強いほど、じゃあ今までは何だったのだろうという気持ちもわいてきます。結論として、ものごとにこだわった見方をする人生というのは往々にして、こんな遠回りをさせることになるというような仏教的な教訓でしょうか。ちょっと大げさすぎますが、ありうる話ではあるような…・。
それはそれとして、この方法の前の状況の私についてもう一度考えると、それは、よちよち歩きなのに、大きな靴を履いて歩こうとしていたという感じでしょうか。筋力もない状態で奏法をあれこれするのも意味がないとは言わないまでも、効率的ではなかったのかもしれないという気になってきました。同様なことは、マウスピースの選択にも言える気がします。
よくマウスピースをいろいろ変える方もいらっしゃるでしょう。私も、今までに累計で40本ぐらいは買っていると思います。いろいろ変えていくうちに、これはあんまり意味のあることではないような気がして、やめてしまいました。というか、どんなときにもしっくりとくるマウスピースが決まっていて、結局そのタイプになるという理由からいろいろ迷うことをやめました。
特にアマチュアで時間のない中でやっていると、寄り道に時間をかけることはできませんので、あまり神経質に考えたり、マウスピースがすべてを解決してくれるかのようなうたい文句に惑わされないほうがいいと思います。その前に、自分の唇の環境というか、再三言っている筋力強化、つまり毎日練習する人と同様なぐらいの筋力があって、そこに到達してからでも、マウスピースの選択はいいのではないかと今更ながらに感じるのです。どう見ても、それはマウスピースのせいではないでしょうと思うような技量の方まで、失礼ながら、マウスピースにこだわるのは、あってもいいけど、長引かせてはいけないことだと思います。
いずれにしろ、この鉛筆を使ったトレーニング方法は近年にないほどの効果の上がる方法だったことは間違いありません。これをどう演奏と結びつけることができるかが、今後の課題です。
以前ご案内の本が、私がこの記事でご案内してきた鉛筆をくわえるという方法を説いている本です。全文英文です。また、書籍では販売しておらず、Kindle版として販売しています。もちろん、PCやその他の端末でも見られますので、興味のある方は買ってみたらいいと思います。Amazonのページで、こういう表示になります
上記リンクをクリックすると上のような画像が出てきますので、その『無料アプリ』というのをクリックするとソフトをダウンロードできます。先に、そちらを試して確認して買うといいのかもしれません。
最後に、ちょっとした疑問があります。なぜ、昔から鉛筆の方法というのがあったのに、その手順が伝わらなかったのかということです。逆に、なぜ、本書ではこんなに細かい段階を踏んだ方法論を紹介することができるのだろうかということです。もしかしたら、秘伝として昔からあったものなのか。それを今暴露しているのか、それとも著者が試行錯誤の上に編み出したものなのか。まったく謎だということだけは、念のために追加しておきます。ただ、言えることは、何を習得するにも最後は自分の判断で…というのがかなり重要なことなのだろうと痛感させられた10週間でした。