昔々のやり方
半世紀以上前、初めて楽器を手にして、まず教わるのがロングトーンでした。楽器になれてくると、次にタンギングということになりました。先輩、曰く、上の歯の裏側に舌をつくのだと・・・。いわゆる、舌つきです。このタンギング重視の考え方は当時の環境によるのかもしれません。楽譜の多くがマーチであったりして、おまけに私の担当していたのは、トロンボーンでしたから、リズムを刻むような感じのタンギングばかりの演奏の楽譜ばかりだったように思います。
そして当時の田舎ではトロンボーンの教則本は全音出版のものと音楽之友社の入門者用ぐらいしかありませんでしたので、シングルタンギングしか書かれていませんでした。或るきっかけでトランペットを吹くようになり、初めてダブルタンギングなるものを知りましたが、あんまり必要性を感じることなく、練習もじっくりすることもなく、過ごしていました。ところが、今は違うかもしれませんが、当時は中学生レベルでも、トランペットのソロがやたらあったりしましたので、ごまかしがきかなくなり、いろいろと教則本を探したりして、その方法を知ることになります(余談ですが、最近の中高生の吹奏楽などでは、ソロというとサックスだったり、ジャズっぽいアレンジでもトロンボーンだったり、なにかトランペットのソロを回避しているように思えます。その方が遙かに安全ですけど・・・)。
或る教則本に紹介されていた方法は、舌の先を下歯の生え際において、上の歯の裏側に当てるというものでした。また、その応用編として、舌先を下の歯の裏側に当てるようにすると、その結果として、上歯の裏側をつくように自然となり、スムーズなタンギングとなるというものでした。もちろん、その当時もダブルタンギングの発音は、tukutukuでした。
スーパーチョップスでのシングルタンギングの考え方
それでは、私の取り組んでいるスーパーチョップスではどうなのか。シングルタンギングのことについて、明確に述べています。舌の先はスーパーチョップスですから、下の唇の裏側につけていますが、その少し中側の舌の上の表面部分で上の歯の刃先に当てるようにするのだといっています。タンギングは前後運動ではなくて、上下運動だといっています。たとえとして、舌を蛇の頭のように動かしてはならないという表現をしています。確かに、プロのとてつもない早さのタンギングを聞く限り、いちいち舌を引いていたら、そんなに速度が上がるとは思われません。
ただ、これが難しいのです。舌を前方に維持し続けることが難しいのです。時間がたつにつれて、どうしても舌を上下に動かすというよりは、前後に動かしてしまうようになります。これは、結構長い間、うまくできない状況が続き、今も課題の一つになっています。
考え方を変えてみた
この数ヶ月、舌を下の唇の裏につけつつ、その状態を維持してタンギングする方法をいくつか試してみたところ、あることを思い出しました。昔々のタンギングの方法です。舌を上の歯の裏側に当てるにあたり、上の歯の裏側に当てる意識ではなく、下の歯の裏側に当てるつもりでやるとうまくいくという方法です。水泳でいえば、息を吸うのではなくて、吐くから吸えるというような感じです。
この応用で、舌の先を下の唇の裏側に当てて、下の歯に当てる感じで、上の歯の先端に当てるということをしてみました。こうすることで、舌が後退することがかなり避けられ、また、演奏途中で下がりそうなときには、もう一度思い出すことによって、維持することができるようになりました。
この舌を前方に置いておく、ということがスーパーチョップスでの神髄で、逆に言うと、全体やってはいけないのが舌を後ろに引くことだと書かれています。そして、その延長線上にダブルタンギングがあります。