楽譜のご紹介
この曲の作曲者、クルトワイル(Kurt Weill (1900-1950))は、ドイツのデッサウの出身です。ベルリンで正統派の音楽教育を受け、20代前半で若手作曲家として注目されるようになりました。
1927年にブレヒトと出会って「マハゴニー」を作曲します。翌年にコンビの代表作「三文オペラ」を完成させますが、その中の曲、『マック・ザ・ナイフ』は単独の曲としてその後、たくさんのアーティストによって演奏されています。
ドイツ国内が反ユダヤ主義に傾く中でワイルの仕事は制約を受けるようになり、1933年にナチス政権が成立をもって、ドイツを脱出することになります。フランスを経由して、最終的に1935年にアメリカに亡命しました。
アメリカではブロードウェイ・ミュージカルを中心に活躍し、作られた楽曲のうちのいくつかは、今でもスタンダードナンバーとして多くの人たちに愛されています。
その中の1曲、「セプテンバー・ソング」は”September affair”という映画の挿入曲として有名です。1950年の放映ということですので、私は知りません。『旅愁』という不倫映画で、ありがちな映画なんですが、その中で曲が流れます。ジョン・フォンテーンという女優が主演です。知っている人は知っているという古い時代の女優です。
(そんな動画を見ていたら、古いスクリーンという映画の雑誌のことを思い出しました。古本屋にも置いていて、たまに買った記憶があります。本当は近くにあるマジックインキで陰部を黒塗りしてある本場のプレイボーイ誌のほうが見たかった。)
その後、フランクシナトラが1965年ごろに歌って、多分そのあたりから認識ができたのだろうと思います。もしかしたら、ナットキングコールのほうが早いかもしれません。
この曲は、1970年代くらいまでは、よく耳にした曲だったと思いますし、また、その時代をよく知っている世代にとっても、懐かしい曲だと思います。日本では、もっぱらフランク・シナトラの歌声で聞くことが多かったと思います。独特の癒しを感じる曲です。
個人的には、田舎の公立だけどバカばっかりの行く高校へ行くことを信じて疑わなかったのに、家庭の事情で、急遽、東京へ行くことが9月に決まり、中3の2学期のおしまいあたりから、学校を1か月以上休んで、町の図書館にこもり猛勉強に励み、めでたく東京の高校へ入学できたということがありました。
しかし、あまりの環境の変化についてゆけず、少し精神を病みました。やっとたどり着いた夏休みは、想像以上の酷暑で、動かないのに汗が出るという生まれて初めての経験をしました。
そして、秋が来ました。私は初めて日本の秋に触れた思いがしました。秋が終わらない、そんな感じと、じわっと寄せてくる寂寥感でした。土の地面が恋しくて、公園によって、ブランコに腰掛けたとき、すべてが変わったんだと実感しました。もう50年以上前のことですが、そんな、喪失感をこの曲のメロディーに感じます。