楽譜のご紹介
意外にBGMなどで知らず知らずに聞いている曲です。カーンはアメリカの代表的な作曲家で、主にミュージカルの作曲家で、『煙が目にしみる』『イエスタデーズ』などの代表作があります。この曲もVery Warm for May (1939)というミュージカルのために作られた曲で、その後、ハリウッドで映画化 Broadway Rhythm (1944)されています。翌年、フランクシナトラが歌って大ヒットしているようです。
カーンという作曲家は、ユダヤ系のドイツ人と同じくユダヤ系のボヘミヤ人の母との間に移民2世として生まれたということになっています。よくある話です。ニューヨークで生まれ、高校生となった時には、作曲をし始めて、その道に進もうとしますが、親に反対されたということです。しかし最終的には自分の意志を貫き、作曲家となったということです。これまた、よくある話です。しかし、その後の長い作曲家としての成功はそうあることではないでしょう。多分、本人の中では、『成功することは決まっていた』という確信みたいなものがあるのは当然のことで、リスクを冒す価値があるという判断がつくほどの才能を自分の中に認めることができたのでしょう。
クラシックの作曲家については、結構人権侵害とも思われるほど、根掘り葉掘り調べつくされますが、こういうポップスの作曲家ですと、そんなことはないような気がします。この曲を作曲したカーンは1885年生まれで、1945年に亡くなっています。つまり大戦末期に亡くなっているということです。20世紀の初めから、中盤までを生きてきたわけですが、多分、こどものころには、南北戦争についていろいろ伝え聞いたことがあったと思います。その後のアメリカの繁栄や大不況時代・2度の大戦が続いた中で、この曲を書いたということになり、なかなか興味深い感じがします。間違いなくアメリカ的な曲です。
この曲は、じっと相手のことを思い、私にとって、あなたがすべて、いつかきっと私のものになるわ、と切ない思いを歌っています。曲としては、単純な曲なので、いろいろなアーチストがカバーしています。もともとは、ミュージカルの音楽ですから、どちらかというとオペラ的というか、そんな発声で歌われる曲のようです。