楽譜のご紹介
この曲はそのままメジャーな曲になったわけではなく、原型は1930年ごろからいろいろな形で存在し、メジャーだったものが、途中でマイナーに変わるなどの曲折を経て、現在の形になっています。
最初に取り上げた有名どころとしては、ボブ・ディランです。ボブ・ディランが、デビュー・アルバム『ボブ・ディラン』(1962年)の中でこの曲を取り上げ、真に迫ったボーカルで高く評価されました。
レコーディング前にクラブやコーヒー・ハウスで演奏していた時期からこの曲をレパートリーにしており、1961年9月のニューヨーク・タイムズに発表されたロバート・シェルトンによるコンサート・レビューでは、彼がこの曲を不明瞭な発声でうなったりすすり泣いたりしながら唄う様子が紹介されています。
アニマルズのバージョンがヒットすると、聴衆はディランにもアニマルズのようなアレンジで演奏することを求められたために、ディランはコンサートでこの曲を取り上げることを止めてしまいました。しかしディラン本人はアニマルズのバージョンを大変気に入っており、彼がロックサウンドを導入するきっかけの一つになったといいます。
本国アメリカではたくさんのアーティストがカバーしている曲ですが、日本でこの曲が最も聞かれたのは、たぶんアニマルズのバージョンだと思います。
アニマルズは、1964年6月にシングルとしてリリースしています。同年9月にビルボードのヒットチャートで三週連続1位になり、イギリス、スウェーデン、カナダのチャートでも1位を記録しました。日本の『ミュージック・マンスリー』誌に掲載されていた洋楽チャートでは、1964年に最高位2位を記録しています。
2004年に『ローリング・ストーン』(Rolling Stone) 誌が選んだ「ローリング・ストーンの選ぶオールタイム・グレイテスト・ソング500」では122位となっています。ロックの殿堂の「ロックン・ロールの歴史500曲(500 Songs that Shaped Rock and Roll)」の1曲にも選出され、1999年、グラミーの殿堂(Grammy Hall of Fame)入りを果たしています。
原曲の歌詞の女性を、男性に変えており、”The House of the Rising Sun” は刑務所もしくは少年院を指すと解釈されるようになっています。
アレンジは、エレクトリック・ギターのアルペジオが印象的なロック・アレンジで、「最初のフォーク・ロック」であるとも言われています。レコードのクレジットには、アレンジとしてアラン・プライスが記載されていますが、これは他のメンバーの名前を書くスペースがなかったからだと、エリック・バードンがインタビューで答えています。
ディランのバージョンを元にしていると言われることが多いですが、エリックによれば、この曲を初めて聴いたのは、ニューカッスルのクラブで、フォーク・シンガーのジョニー・ハンドル(Johnny Handle)が歌っていたものであるといいます。デイヴ・ヴァン・ロンクのアレンジが完全に払拭されているとは言えず、ロンクは自分のアレンジを元にしていると主張していました。
なお、日本語の題名には異論があります。この『朝日のあたる家』という題名が本当にこれでいいのかどうか。朝日荘の歌みたいな題名を聞いたことがあります。言ってみれば、日本各地にある、サニーコーポ、朝日荘、サニーレジデンスみたいな題名なのか、それとも、この歌が売春宿のことをうたっているということから、象徴的に朝日ということを言っているのか…。西洋的な裏社会的な意味で、この題名ということでしたらこれでいいという気がします。自然と現在の題名に淘汰されたのかもしれません。
また、教会のパイプオルガン並びにオルガンの対比としての電子オルガン的な響きがこの曲のバックにあるのが、日本人にとってはあまり気がつかないかもしれない、比喩的な何かを象徴しているのかもしれません。