楽譜のご紹介
この原題が”THE BLUE BELLS OF SCOTLAND”ということで、勘違いをしていました。どことなく、宗教音楽のような感じもして、そこで、『BELL』の文字が見えたので、教会の鐘のことを書いた曲なのだろうと勝手に思っていました。
釣鐘草というキキョウ科の青い釣鐘状の花のようです。割と低温のところに咲く花のようで、ひときは目につくものなのだと思います。
また、この曲は、あのアーバンのトランペット・コルネット教本のなかに載っている曲です。他に吹奏楽器にいろいろなアレンジで扱われるケースの多い曲です。比較的難しくなく、いろいろな展開があって面白い編曲になっています。その元となった曲がこの曲で、どこかこれも聞いたことがあると思ったら、明治時代から学校で歌われた曲のようです。
このスコットランド民謡と日本と関わりは、多くの曲がそうであるように、明治以降の音楽教育の初めにあった方針にあります。
明治維新後、音楽教育の欧風化を図るため、文部省は「音楽取調掛」を設置し、欧米各国に留学生を派遣して、音楽教育を受けさせるとともに、曲の収集もさせました。
その最初の成果が明治15年(1882)から同17年(1884年)にかけて出版された『小学唱歌集』でした。この唱歌集に掲載された曲の大部分はイギリス、アイルランド、ドイツ、アメリカなどの外国曲で、それに日本語詞をつけたものでした。『スコットランドの釣鐘草』も採用されましたが、題名は『うつくしき』というものでした。
この曲には詞がついていて、徴兵された恋人を思い、その帰りを待つ女性の心境を描いたものとあります。それが、この釣鐘草という青い花に歌われているということです。原詩はこんな感じです。
日本語詞:稲垣千頴
1 うつくしき わが子やいずこ
うつくしき わが上(かみ)の子は
弓取りて 君の御先(みさき)に
勇みたちて 別れゆきにけり
2 うつくしき わが子やいずこ
うつくしき わが中(なか)の子は
太刀(たち)帯びて 君の御許(みもと)に
勇みたちて 別れゆきにけり
3 うつくしき わが子やいずこ
うつくしき わが末の子は
鉾(ほこ)取りて 君の御後(みあと)に
勇みたちて 別れゆきにけり