曲の由来
この曲は最初は1897年に作曲されましたが、のちに、1898年には組曲「ペアレスとメリザンドOp.80)」の中の一曲として管弦楽に編曲されました。
「ペアレスとメリザンド」はメーテルリンクの戯曲ですが、その付随音楽をドビュッシーが断った(ドビュッシーはオペラ化にしました)ため、フォーレによって書かれたそうです。
この「シシリエンヌ」は、劇中で主人公の二人が愛を語り合うシーンに使われています。
そもそもこの曲は、いろいろ使いまわされています。ある劇作品のために依頼されたものでしたが、あえなく未発表となります。その後、チェロ曲として出版し、さらには別の劇音楽に、その上また組曲版にも、この曲を選びました。現在ではフルートとピアノ等で演奏される機会が多い人気曲となっています。
この曲の題名は音楽の形式の名を表していて、シチリアと直接、シチリアを表現しているわけではないようです。しかし、シチリアというのは今ひとつわからないところです。シチリアというとマフィアということがすぐ浮かびますが、なぜなんだろうという話がまず1つ。それと、ゴッドファザーという映画に出てきたワルツの調子がやはり、この曲に共通のものを感じるということです。
<<シチリアーノまたはシチリアーナとは>>
シチリアーナ(イタリア語:siciliana)とは、ルネサンス音楽末期から初期バロック音楽に遡る舞曲の一つ。ゆるやかな8分の6拍子か8分の12拍子で作曲され、ためらいがちにたゆとう曲想と付点リズムが特徴的で、通常は短調(もしくは自然短音階)をとります。器楽曲の楽章として利用されただけでなく、オペラ・アリアにも応用されています。
シチリアーナは、おそらく「シチリア舞曲 danza siciliana」ないしは「シチリア風に A la Siciliana」に由来する女性名詞ですが、男性名詞であるシチリアーノ(siciliano)や、フランス語の女性名詞・シシリエンヌ(Sicilienne)も用語法として定着しています。
古い時代のシチリアーナとして最も有名なのは、20世紀にレスピーギによって《リュートのための古風な舞曲とアリア》第3組曲の第3曲として弦楽合奏用に編曲された、16世紀イタリアの作者不詳のリュート曲でしょう。
バロック時代の有名なシチリアーナには、ヘンデルの《リコーダー・ソナタ ヘ長調》HWV369の第3楽章(ニ短調)や、伝バッハ(偽作)の《フルート・ソナタ 変ホ長調》BWV1031の中間楽章(ト短調)が挙げられます。
シチリアーナのリズムは古典派音楽においても愛用され、モーツァルトの《ピアノ協奏曲第23番》や、ハイドンのオラトリオ《天地創造》のソプラノ独唱のアリアにも利用されています。チマローザの《オーボエ協奏曲》にもシチリアーナの楽章が含まれています。
19世紀の間、シチリアーナによる有名な曲はほとんど産まれませんでしたが、世紀の変わり目にここでご紹介するフォーレによって、チェロとピアノのための《シシリエンヌ ト短調》が作曲されました。これは後にフォーレの高弟・ケックランによりオーケストラ用に編曲され、劇付随音楽《ペレアスとメリザンド》とその組曲版に挿入され、いっそう広く知られるようになりました。