楽譜のご紹介
ラ・クカラチャはコリードというジャンルに分類されるメキシコ歌謡です。1910年に始まったメキシコ革命戦争時代に反政府側のパンチョ・ビージャの兵によって歌われ、後に敵味方を問わず歌う国民歌となりました。ビジャ軍のテーマソングというか、愛唱歌になったのは、ハイテンポで単純なメロディの繰り返しが、行軍中に歌うのに適していたからといわれています。
メキシコはせっかく独立しても、ついた政権が欧米の外資を優遇し、国民を顧みない悪政をしたために、内戦がおこりました。よく侵略戦争ということを言いますが、大国が正面切って侵略するのではなくて、このように小ずるい方法を取り始めたのです。そんな中で、市民の中に生まれたのがこの曲です。
戦いに疲れた兵士が夜のキャンプで慰みに歌う歌だったので歌詞は多様で数えきれないものがあるといわれます。『線路はつつくよどこまでも』とその意味では同じで、同じように猥歌もあるようです。
『ラ・クカラチャ』の原曲はスペインの古い民謡で、メキシコへの移民が持ち込んだものとされています。1818年にはこの歌に言及した文献があるようなので、たぶんそれ以前にメキシコに入っていたと思われます。
ラ・クカラチャというタイトルは、当時の農民が着ていた黒い麻の服、または兵士といっしょに行動していた女性たちが背負う黒い鍋を後ろから見ると、ゴキブリのように見えたから、という説が有力です。はっきり言いますと、スペイン語で、ラ・クカラチャはゴキブリです。この曲の感じがゴキブリの動きに聞こえます。そう改めて知ると、ちょっと気持ち悪い。