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【無料楽譜】田中穂積作曲『美しき天然 』

日本の名曲集
背景はこの曲のもととなった景色です。

曲の由来

美しき天然(うるわしきてんねん)は、田中穂積作曲、武島羽衣作詞の唱歌。1902年(明治35年)完成。ワルツのテンポでと楽譜に表示されています。天然の美(てんねんのび)とも呼ばれます。初出は作曲年の明治35年「唱歌教科書(巻三)」。当時の高等女学校で唄われましたが、以後、昭和24年までの学校教科書から姿を消します。

戦前の高等女学校とは

 ところで、高等女学校というのがどういうものだったかふれておきます。第二次世界大戦前の女子中等教育機関で、家庭の主婦としての高等普通教育を施すことを目的としていました。一般には、女学校、その生徒を女学生とよんでいました。

 1872年(明治5)に開設された官立の東京女学校が女子中等学校の端緒をなしますが、その後、82年に東京女子師範学校(現お茶の水女子大学)附属高等女学校が創設され、以後、女子の中等学校は高等女学校の名称を用いることになります。そして、99年に「高等女学校令」が制定され、各府県にその設置を義務づけるに至り、急速に普及しました。

 高等女学校は「中等以上ノ社会ニ於(お)ケル女子」を対象として「須要(すよう)ナル高等普通教育ヲ為(な)ス」(同令1条)ことを目的とし、貞淑温和な婦徳の涵養(かんよう)を中心内容とする良妻賢母主義に基づき、家事、裁縫、芸事中心の女子教育を施しました。今と全然違います。

 高等小学校2年修了(12歳)を入学資格として修業年限は4年を基本とし、土地の事情により1年の伸縮を認めています。1910年(明治43)に、主として家政に関する科目を修める実科を置くことを認め、ここに実科高等女学校が成立しました。高等女学校は高等普通教育を施すことを目的としたが、家庭の主婦としての生活に力点を置いたため、男子中学校のようにその上の高校、大学へ続く教育機関としての性格をもたず、教育内容も数学、英語などの科目においては中学校よりも低い程度にとどまっていました。

 戦後、学校教育法のもとで、高等女学校の多くは新制の高等学校あるいは女子高等学校に改編され、現在に至ったわけです。相当話がそれました。
この有名な曲は、そんな高等女学校で教えられていた曲ですが、戦後の教育の中では、私の個人的な記憶ですと、確か中学生の時の教科書だったかに載っていたと思います。『うつくしき天然』と思っていましたが、『うるわしき天然』でした。

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楽譜のご紹介

 作曲家の田中穂積は私立佐世保女学校の音楽教師でした。その地の九十九島の美しい風景を教材にしたいと考えていました。そこで、折りよく入手した武島羽衣の詩に作曲し、本曲は誕生しました。この武島の詩は、田中の思い描いていた九十九島にぴったりだったといいます。この曲は、女学校の愛唱歌として地元では長らく親しまれてきたが、広く一般に知れ渡ったのはかなり後のことです。活動写真の伴奏や、サーカスやチンドン屋のジンタとして演奏されたことも、この曲が有名になった大きな要因の一つです。

 私の認識でも、チンドン屋の定番曲でもありますし、サーカス小屋でも流れていそうな曲です。今は、チンドン屋さんも演奏も確かなものになってきましたが、昔はよく音を外したり、演奏自体もなんか変なものが多かったように思います。今は大道芸の一部として、地位を得ているようです。いかがわしさがなくなったのもちょっと残念な気もします。子供のころ、近くの都市に行くと街角に傷痍軍人の姿で片腕をさらしで巻いて隠し、松葉づえを片手に、ハーモニカで軍歌を吹きながら物乞いをする立派な体格の大人がいました。そんなみえ見えの姿でも、憐れむ人がいたからそうしていたのだろうともいます。少なくとも、昭和30年代まではいたように思います。

トランペット楽譜

トロンボーン楽譜

アルトサックス楽譜

フルート楽譜

詞の内容

この歌の歌詞はもっと長いのですが、1番だけご紹介します。

空にさえずる鳥の声
峯より落つる滝の音
大波小波とうとうと
響き絶やせぬ海の音
聞けや人々面白き
この天然の音楽を
調べ自在に弾きたもう
神の御手(おんて)の尊しや


 ちょっと見ただけでも、自然の不思議さと賛美、ちょっと仏教的輪廻も感じ、そして、歌を聞いてくれという口上となっていて、いかにもその後のチンドン屋や見世物的なものの音楽に結びついてしまう要素を含んでいます。


 私には『首から下は人、腰から下は蛇、世にも哀れな姿に生まれついて、・・・・』、そんな文句が思い出される曲です。これは、私の田舎のお祭りに来る見世物小屋の口上です。この哀れさと、この音楽があまりにも合うんです。もちろん、その小屋にお金を払って入らなければ、本当に下半身が蛇かどうかはわかりません。小学生としては、ものすごく興味がわいていました。たとえると、同じ大道で売られていた、かけるとみんな裸に見えるメガネぐらい興味津々でした。この曲の半音、ずれるところがそんな雑多な劣情をさらに増幅させるように思えました。昔は平気で子供を騙す大人がたくさんいました。

演奏例

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