楽譜のご紹介
作曲者の草川信は明治26年(1893)長野県松代の生まれで、「赤い鳥運動」に作曲家として参画し、『夕焼けこやけ』『汽車ポッポ』『揺藍(ゆりかご)の歌』など童謡の傑作をいくつも世に送り出しました。いずれも優しい感じの曲です。
赤い鳥運動とは鈴木三重吉により創刊された『赤い鳥』(1918年)という雑誌をもととした、運動で、その雑誌の創刊の意図は、「低級で愚かな」政府主導の唱歌や説話に対し、子供の純粋な情操を育むための童話・童謡を創作して世に広める一大運動を興すことであり、多くの時の作家に支持されたものでした。
ちょうど、第1次大戦が終了した年であり、日本が本格的に一等国としての自覚と、大正7年という割とリベラルな市民の感情が熟成し、ロシア革命などの新たな動きもあった時代の流れを汲んでいるのだろうと思います。
歌詞の中に、『どこかで雲雀(ひばり)が鳴いている』というのがありますが、絵にかいたような光景を長野にいた時に見たことがあります。桜の季節を少し過ぎたかなというあたりに、きれいな小川のほとりを垂直に飛びながらさえずるひばりでした。ちょっと忘れられない光景でした。フーッと意識が薄らぐような・・・、そんな感じです。