別れのワルツとも呼ばれ、甘い恋のエピソードと共に親しまれている曲です。1835年、滞在先のドレスデンを去る際に作曲しました。パリに住んでいたショパンは旅行の帰途に立ち寄ったドレスデンで一人の女性に出会います。黒い瞳をもったその女性はマリア・ヴォジンスカ。
「あの《ワルツ》(あなたが最後にお弾きになって、私たちにくださった曲です)を私が弾いて楽しんでいると、みな聴いて楽しんでいます」と、マリアからショパンに宛てた手紙が残されています。ピアノを弾きながら、即興的に作曲したものと思われる。
2人は恋に落ちます。マリア・ヴォドジンスカはショパンにとって唯一結婚を約束した女性であり、彼の理想の女性であり続けましたが、マリアとの恋は、結婚寸前までいきながら結局成就せず、1837年に彼女の両親から何の理由も告げられず、婚約破棄の手紙を受け取り、悲しみに沈んだのでした。
彼は、彼女から送られてきた手紙を束ね、彼女からもらったバラの花を添えて、その上に「我が悲しみ」と書き記し、生涯、大事に持ち歩いていたと伝えられています。
この一連のエピソードから通称別れのワルツといわれているが、作曲時は交際中で、そのような結末とは異なる、愛に満ちた心情から生み出された創作と思われる。
この作品は、死後遺作として発見され、1853年にユリアン・フォンタナによりショパンの原稿に手を加えて出版されました。