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遠い東洋のファンタジー 蝶々夫人
蝶々夫人ははやい話、アメリカ人将校と没落武士の少女(15歳)との結婚から始まる悲劇です。この将校は、結婚し、子供もできたのですが、本国に戻るようにという命令で戻ってしまいます。ただ、また来るから待っててねという罪な言葉を残します。周りから騙されているに違いないというそしりを受けながら、それを信じてひたすら待つ蝶々夫人。ところが、アメリカ人将校はちゃっかりアメリカで結婚してしまうというありがちなストーリーです。戦後すぐに似たようなことがあったような気がします。その後、このアメリカ人将校は、アメリカ人妻を引き連れて、約束通りもう一度日本に来ます。きっと、子供がいるから必ず帰ってきてくれると信じていた蝶々夫人は、一瞬のぬか喜びのあとで、絶望に打ちひしがれ、自刃するのでした。という感じですが、現実はちょっと違っていたようです。
当時の長崎では、洋妾(ラシャメン)として、日本に駐在する外国人の軍人や商人と婚姻し、現地妻となった女性が多く存在していました。事実、19世紀初めに出島に駐在したドイツ人医師のフィリップ・フランツ・フォン・シーボルトにも、日本人妻がいました。
下級の軍人が揚屋などの売春宿などに通って欲望を発散する一方、金銭的に余裕がある高級将校などは居宅に女性と暮らしていました。この際の婚姻届は、鎖国から開国にいたる混乱期の日本で、長崎居留の外国人と日本人女性との同居による問題発生を管理したい長崎奉行が公認しており、飽くまでも一時的なものだったのです。
相手の女性も農家から長崎の外国人居留地に出稼ぎに来ていた娘であり、生活のために洋妾になったのです。互いに割り切った関係であり、この物語のように外国人男性との関係が真実の恋愛であった例は稀です。現に、シーボルトの日本人妻だった楠本滝は、シーボルトの帰国後に婚姻・離婚を繰り返しています。まして、夫に裏切られて自殺をした女性の記録は皆無であり、蝶々夫人に特別なモデルはいない創作上の人物であると考える説も有力です。
蝶々夫人のこの歌詞の内容を見ると、丘の上で待っているというところなど、映画の『慕情』のラストシーンが思い浮かびます。もちろん、こちらをモチーフにしたものです。