ポーランドの農村を舞台としています。牛に引かれる車輪の軋みと、思うように動かない鈍重な牛の動きが、テューバのソロを先頭にした低音楽器を中心に描写されます。原曲は終始ff(フォルテシモ)による荒々しい曲なのですが、ラヴェルにより強弱記号を操作し、曲全体にメリハリをつけています。
低音部分の吹奏楽器を演奏している人ならば、絶対吹いてみたくなる曲だと思います。ただ、トランペットではちょっと低すぎるので、音を上げています。小人、古城、プロムナードに続いてあげています。
この題名が『牛』ということになっていますが、どんな絵の牛なのかがいまいちわかりません。闘牛の牛なのか、荷物を運んでいる牛なのか、放牧中の牛なのか、いずれにしても、曲調を考えると、強気の牛のように感じます。西洋的には、牛というとそんなイメージが強いようです。これについては、ポーランドの農村の風景という設定で、荷物を積んだ荷車を引く牛であるということです。それと、このムソルグスキーの肖像画ですが、いつ見てもあまりいい男ではありません。だからどうしたということですけど…。これも、死の病を患っているときの肖像画であり、あまりいい男ではないというのはあたりません。。
そもそも、この曲の展覧会の絵は友人の絵描きの急死を悼んで開いた展覧会で、そこに飾られていた10点の絵について、作曲したということです。その根底には大親友なのに、その友の病気に気づかず、何もしてやれなかったという気持ちがあったんだといわれています。
また、このモデルになった絵のほとんどがなくなっているそうです。それ以前に、私は架空の展覧会の絵、つまりあくまでもイメージのものと思っていましたが、実際に絵を見て曲を作っているということでした。