曲の由来
ピアノソナタ第8番 ハ短調 作品13『大ソナタ悲愴』(”Grande Sonate pathétique”)は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが作曲したピアノソナタ。作曲者の創作の初期を代表する傑作として知られています。
正確な作曲年はわかりませんが、1798年から1799年にかけて書かれたものと考えられており、スケッチ帳には作品9の弦楽三重奏曲と並ぶ形で着想が書き留められています。楽譜は1799年にウィーンのエーダーから出版され、早くからベートーヴェンのパトロンであったカール・アロイス・フォン・リヒノフスキー侯爵へと献呈されました。本作は作曲者のピアノソナタの中で初めて高く、永続的な人気を勝ち得た作品です。楽譜の売れ行きもよく、気鋭のピアニストとしてだけでなく作曲家としてのベートーヴェンの名声を高める重要な成功作となりました。
第2楽章はベートーヴェンの書いた最も有名な楽章のひとつです。ヴィリバルト・ナーゲルはベートーヴェン全作品中でも指折りの音楽と評価しており、マイケル・スタインバーグはこの楽章のために「ハープシコードの所有者は最寄りのピアノ屋に駆け込んだに違いない」と述べています。美しく、物憂い主題が静かに奏で始められるところがポイントでしょう。
この曲の『悲愴』という標題は初版譜の表紙に既に掲げられており、これがベートーヴェン自身の発案であったのか否かはわかりませんが、ベートーヴェン本人も了解していたものであろうと考えることができます。
ベートーヴェンが自作に標題を与えることは珍しく、ピアノソナタの中では他に第26番『告別』があるのみです。『悲愴』が意味するところに関する作曲者自身による解説は残っていません。標題についてパウル・ベッカーはそれまでの作品では垣間見られたに過ぎなかったベートーヴェンらしい性質が結晶化されたのであると解説を行っており、ヴィルヤム・ビーアントは「(標題は)気高い情熱の表出という美的な概念の内に解されるべきである」と説いています。
この曲もあまりに有名な曲です。1980年代にポップスとして発表された曲でもあったように記憶します。一部だけになりますが、気分だけ味わう程度であれば充分でしょう。