作曲者のグノーがちょうど子供のころ、ドイツではゲーテが『ファウスト』の第1部を完成(1808年)させました。当時は今と違って、情報がそんなに流れることもなかったことが想像できますので、直接の影響はなかったと思います。
その後、グノーが成人して、ドイツに行って、このゲーテの『ファウスト』のフランス語訳を読んで感銘します。そして、オペラ化しようと決意し、作りますが、異国ドイツではあまりいい評価ではなかったようです。
もしかしたら、ドイツでは日本人がちょっとおかしな着物を着た『蝶々夫人』を見るような感覚と同じおように受け取られたのかもしれません。
では、ファウストはどんな内容なのか?
15世紀から16世紀頃のドイツに実在したと言われる、高名な錬金術師ドクトル・ファウストゥスの伝説をもとに、ゲーテがほぼその一生を掛けて完成させた大作です。
ファウスト博士は、錬金術や占星術を使う黒魔術師であるとの噂に包まれ、悪魔と契約して最後には魂を奪われ、体を四散されたと云う奇怪な伝説になっています。
ドイツらしくどこか観念的で、とっつきにくい内容なのです。また、ファウストは、自分の人生に満足しておらず、そのために悪魔と盟約して自身の魂と引き換えに果てしない知識と現世での幸福を得た・・云々とありますが、そこから、現世的な欲望にギラギラした人を比喩する言葉としても使われるようになります。
しかしながら、このグノーのファウストはファウストの一部のストーリーを取り上げ、少しフランス風にアレンジしています。ファンタジーの要素を拡大しています。そのアレンジされた台本のオペラの第4幕に出てくるのが、この兵士の合唱となります。