≪あらすじ≫
第一幕
舞台はパリにあるポンデヴェドロ(モンテネグロ公国がモデル)公使館。広間ではポンデヴェドロ国王の誕生祝賀パーティーが開かれています。
出席者の話題の的は、ハンナ・グラヴァリ未亡人。ハンナはポンデヴェドロの老富豪と結婚し、そのわずか8日後に夫が急逝したために、巨万の富を得たのであります。パーティーに出席したハンナは、多くの伊達男から口説かれます。
しかしハンナがパリジャンと結婚すれば、大量の資産がポンデヴェドロから失われることになります。それを阻止すべく、ポンデヴェドロ公使のミルコ・ツェータ男爵は、同書記官のダニロ・ダニロヴィチ伯爵とハンナを引き合わせようとします。
ダニロとハンナはかつて恋仲でしたが、身分の違いが彼らの仲を引き裂いたのでした。しかしダニロは、ハンナの資産目当てで結婚するとみられるのを嫌い、わざとハンナから距離を置いています(けなげ)。
一方で、カミーユ・ド・ロジヨンは、ツェータ男爵の美貌の婦人、ヴァランシエンヌを熱心に口説きます(つまり浮気をしようという)が、その気がないヴァランシエンヌはハンナ(未亡人ならいんでないかいということから?)をカミーユ(エロ漢)にあてがおうと考えます。ハンナは踊りの相手にダニロを指名するが、ダニロ(律儀な漢)はその権利を一万フランで売ると宣言します。とてもそんな大金は出せないと、男たちは意気消沈して引き揚げる。その中で、二人は喧嘩しながらも踊り始めます。
未亡人ハンナ・グラヴァリ←【ミルコ・ツェータ男爵】→ダニロ(ハンナの元恋人遺産目当てと思われたくない)
↑
美女ヴァランシエンヌ ⤴ ←❤カミーユ・ド・ロジヨン(色男)
第二幕
舞台は変わって宴の翌日、ハンナ・グラヴァリ邸の庭。多数の来賓を前に、彼女はここに故郷レティンイエ(ツェティニェのもじり)の風景を再現すると言って「ヴィリアの歌」を歌いだす。ハンナがダニロの心を開かせようとする中、カミーユ(エロ漢)はなおもヴァランシエンヌ(既婚の美女)に求愛している。
ヴァランシエンヌの心が揺らいだと見るや、カミーユは彼女を庭のあずまやに連れ込む。そこに夫、ツェータ男爵が現れ、妻があずまやで誰かと会っているのではと勘繰るが、そこから出てきたのは意外にも未亡人ハンナとカミーユ(エロ漢)であった。
ハンナがヴァランシエンヌ(美女)の身代わりになったのですが、結果としてハンナとカミーユ(エロ漢)は婚約を宣言することになってしまう。
ポンデヴェドロから富が失われるのを嘆くツェータ男爵(美女の夫)。一方で、ハンナへの想いを胸に秘めているダニロ(元恋人)も動揺を隠せない。
第三幕
舞台は同じくハンナ・グラヴァリ邸の庭。パリの有名料亭である「マキシム」風の飾り付けがなされ、ダニロの顔なじみであるマキシムの踊り子たちも顔をそろえています。そこへ故国から「もしグラヴァリの数百万がわが国に残らぬ時は、国は破産の危機に瀕する」との電報が届く。
腹を決めたダニロ(元恋人)はハンナに愛を告白する。一方で、あずまやからヴァランシエンヌ(美女)の扇子が見つかり、カミーユ(色男)とヴァランシエンヌ(美女)が会っていたことがばれてしまいます。自暴自棄になったツェータ男爵(美女の夫)は、ヴァランシエンヌ(美女)と離婚してハンナ(主人公の未亡人)と結婚すると言い出す。それに対してハンナは、「再婚するときには、彼女は全財産を失う」という遺言を告げる。
ツェータ男爵(美女の夫)が申し出を撤回する一方、資産を気にしなくてよいと知ったダニロ(元恋人)は、ついにハンナに求婚する。するとハンナは、「彼女は遺産のすべてを失い、その遺産は再婚した夫のものとなる」という遺言の続きを述べる。一方で、ヴァランシエンヌは扇子の中に書かれた言葉を読み上げてほしいとツェータ男爵に請う。そこには、「私は貞淑な人妻です」と書かれてあった。妻を疑ったことに対してツェータ男爵がヴァランシエンヌに許しを請うところで大団円となる。
なんだか、込み入っていそうで、筋はかなり単純。題名の陽気な未亡人はむしろこのあらすじを見るとき、もっともかもと思ってしまいます。
私は、永らくこの『ウィドウ』というのは、未亡人という意味ではなくほかの意味があるのだろうと思っていました。なぜなら、メリーというのは、メリークリスマスというぐらいで、めでたいことの意味であり、未亡人というと、悲しい思いをしているであろうと思われる、あるいはそう思われそうな人だと思いますので、矛盾するわけです。ところが、ここが吉本新喜劇のように、あるいは昔の日活ロマンポルノのように、逆説的な内容が、興味をそそるということがあるのかもしれない。つまり、『陽気な未亡人』でよかったのだということです。洋物でいうと、チャタレー夫人の恋人みたいなものでしょうか。