楽譜のご紹介
「さくらさくら」は、私の世代では小学校入学当時にうたわされる唱歌として記憶があります。私は北国の出身で、さくらは入学してから1か月は咲きませんので、歌わされているという気持ちしかしませんでした。ところで、この『さくらさくら』は、漠然と平安時代やその後の相当古い曲のように漠然と思っていました。しかし、真実は違います。
実際には幕末の江戸時代に、子供用の箏(こと)の手ほどき曲として作られたもので、作者は不明です。もともとは「咲いた桜」という歌詞がついていたそうです。
その優美なメロディから、明治以降、歌として一般に広まり、現在の歌詞が付けられたのでした。時は1888年(明治21年)、発行された東京音楽学校の「箏曲集」に記載があります。
しかし、しかし、それでもまだ唱歌ではなかったのでした。
「さくらさくら」が教育現場に登場したのは、1941年(昭和16年)に文部省が出版した『うたのほん 下』が最初でした。この時に「さくらさくら」と題され、歌詞も再び替えられました。その後、教材として学校で教えられるようになり、日本の代表曲として広く知られるようになりました。
ということは、私の親の世代でも、この曲は知っているかもしれないが、はっきり認識される状況ではなかったことを表しています。
つまり、「さくらさくら」はしばしば「日本古謡」と言われますが、違うということです。