フレデリック・ショパンの夜想曲(やそうきょく)全21曲は作者が20歳の時から晩年に至るまでほぼ均等に創作されています。ほとんどが三部形式で、明瞭な中間部を持つものか、ロンド形式のものかに分けられます。
ノクターンの語源はラテン語で夜をさすNoxから派生し、修道院などで行われる晩祷のことを示します。ひいては夜の黙想、瞑想などの意味に転化したものと考えられています。
宗教作品としての晩祷はモンテヴェルディからラフマニノフまで壮大な作品が存在します。
また貴族の夜会で奏される音楽にノットルノ(Notturno)があり、ルネサンスから古典派にかけてセレナードと同様の機会音楽として存在しました。この個人の瞑想とサロン文化が結びついて、このジャンルが形成されたと思われています。
ピアノ独奏曲としてのノクターンは、アイルランド出身のジョン・フィールドに始まります。ショパンはワルシャワ時代にすでにフィールドの作品に接したものと考えられています。
フィールドのノクターンは、基本的にアルペジョの伴奏の上に歌曲風のメロディが歌われるという単純なもので、ベルカント唱法をピアノ音楽で表現することに長じ、デビュー当初、サロン向けの音楽を作る必要のあったショパンにとって、打ってつけの楽曲形式であったといえます。
ノクターンの作曲は、ショパンの作曲時期全般にわたっているため、作品ごとに作風の変遷を見て取ることもでき、ショパン研究には欠かせないものとなっています。初期のノクターンは、フィールドの影響が色濃く残されているが、時代が下るに従って作曲技法が深化し、ショパン独特の境地へと発展していく様子がうかがえます。
夜想曲第8番変ニ長調 作品27-2は、フレデリック・ショパンが1835年に作曲したピアノのための夜想曲です。翌1836年に出版されました。献呈はテレーズ・ダボニー伯爵夫人。非常に美しい曲想でしばしば「貴婦人のノクターン」と呼ばれています。