『ノルマ』 (Norma) は、ヴィンチェンツォ・ベッリーニが作曲、1831年に初演された全2幕からなるオペラです。主役を歌うソプラノ歌手にとって最も難度の高いオペラの1つだそうです。特に、楽譜にしたソプラノのアリア「清らかな女神よ」(Casta Diva, カスタ・ディーヴァ)は特に有名であり、リサイタルなどで単独で歌われることも多い曲です。この切ない曲調は、ストーリーを知るとなおさら興味深く感じることができると思います。
元々オペラの『ノルマ』ですが、この『清らかな女神よ』は単独で歌われることの多い部分です。そして、この部分は2幕に分かれたこのオペラの第1幕の第1場面(2場面ずつあり)に登場する曲です。設定は紀元前50年頃、ローマ帝国支配下にあるガリア地方です。
第1幕
舞台はドルイド教徒の森。ケルト人はオークの森を聖なる地としていました。森や木を宗教の対象とした原始的な宗教です。ドルイドは宗教的指導のほか、政治的指導、公私の争い事の調停と、ケルト社会に重要な役割を果たしていました。そのドルイドのオロヴェーゾに率いられた一団が、ローマからの解放を願う祈りを捧げて去ります。
物陰から現れたローマの総督のポリオーネは同行する者に、自分のノルマへの愛はもはや醒め、今では若きアダルジーサを愛していることを打ち明けます。そして、ノルマがそれを知れば復讐があるだろう、と恐れおののくのです。
入れ替わるように再びドルイド教徒たちがノルマに率いられて現れ、儀式を行います。ここで歌われるのが有名なシェーナとカヴァティーナ『清らかな女神』です。
人々はローマへの怒りに燃えているが、ノルマは蜂起を許さず、実は自らがローマ総督ポリオーネを密かに愛し、2人の息子までもうけた苦しい胸のうちを独白する。そして、一同は去ります。
これもまたローマ人総督のポリオーネに対する背徳の愛に悩む若きアダルジーザが独りその場に残っています。そこに総督のポリオーネが現れ、一緒にローマへ逃げよう、と情熱的に説得、初めは拒絶していたアダルジーザも遂には従うことを約束する。
第2幕
この若い女性アダルジーザが指導者であるノルマに、私は道ならぬ恋に陥った、どうか許してくださいと告白したところ、ノルマも私もなのよと応じ、友情を結ぶのです。
そんなところにひょっこり当のローマ総督が現れたものだから大変。だいたい、この辺も古今東西変わらず、ローマ総督は大悪党として、2人の女性に責められる羽目になる。
すっかり失望したノルマは子供と一緒に心中しようとしたが、当の若い女性にやめるように、私が身を引くように言って、とどまります。
ところが、それを若い女性アダルジーザから聞いた総督はそれでも若い女性のほうをとろうとします。
そうなると、憎きはローマ総督。ノルマは総督を拘束し、若い女性アダルジーザと別れるなら、生かしてやろうといいますが、総督は譲ろうとしなかった。
失望したノルマはガリア人の集団の前で自ら裏切り者として名乗り、火刑にかかるのです。