曲の由来
弦楽六重奏曲第1番変ロ長調作品18は、ヨハネス・ブラームスが1860年に作曲した弦楽六重奏曲です。ブラームスが27歳の年に作曲され、若々しく情熱的な曲風で知られています。
ブラームスは弦楽四重奏曲の分野では、ベートーヴェンの残した16曲の重圧により、40歳になるまで曲を発表することができませんでしたが、弦楽六重奏曲においては、古典派の巨匠たちに同様の曲種がなかったという気安さから、若くしてこの第1番変ロ長調を残すことができました。
またヴィオラやチェロを好み、重厚な響きを好んだブラームスは、2本ずつにふえたヴィオラ・チェロの声部を自在に書くことにより、厚みのある響きや陰影豊かな叙情性を表現することに成功しています。シューベルトが最晩年に残したチェロ2本の弦楽五重奏曲の、重厚で深い表現から影響を受け、弦楽四重奏にヴィオラ・チェロを追加するという着想を得たともいわれています。
何か劇的なシーンを演出するときに、よく使われテいるように記憶している曲です。それでいながらどこか、情景を客観的に見ているようなかんじもて、映画とかドラマとかに合うんだと思います。なんでもブラームスが失恋したときに作ったという曲らしいのですけど、大作曲家はそんなことまで覗き見られるのもなんだか、いいような、悪いような・・・。
≪クララへの贈り物≫
ブラームスは生涯独身でしたが、長年、思いをはせた女性がいます。大作曲家シューマンの妻、クララ・シューマンです。ブラームスの14歳年上にあたるクララは、当時、ヨーロッパ中にその名を轟かせた一流のピアニストでした。ブラームスはそんなクララを一人の音楽家として敬う一方、一人の女性として恋心を抱き始めたのです。しかし、クララは人妻。ブラームスにとっては決して叶うことのない恋でした。
24歳のブラームスは、クララの元を離れると、やがて2歳年下のアガーテ・フォン・ジーボルトという人目をひく美貌と、甘く美しい声を持つソプラノ歌手と恋に落ちます。クララへの叶わぬ恋とは対称的に、ブラームスはアガーテとの現実的な恋愛を始めたのです。
しかし、「アガーテに自分の芸術活動について色々あれこれと話題にしてもらいたくない。心の支えのようなものをブラームスはむしろクララのほうに求めていって、アガーテに対しては、その心の支えになりきれなかったのではないか」と推測する方もいます。
結局、アガーテと別れ、まもなく、とりかかり始めたのが「弦楽六重奏曲第1番」でした。ブラームスの心の中には再び、クララへの熱い思いが沸々と沸き上がり始めていました。第2楽章をピアノ曲に編曲し、クララの誕生日にプレゼントしたのです。