タイトルの通り、ハクチョウが「白鳥」のモデルであると思われがちですが、大阪音楽大学学長の西岡信雄は本作の白鳥のモデルについて、「ハクチョウはダンスを踊ることはできない。白鳥のモデルは求愛のダンスを踊るツルであり、タンチョウが存在する日本と違って白いツルがいなかったヨーロッパだったので、ツルのダンスにハクチョウの白いイメージをあわせたのではないか」という意見を述べ、実際にツルの求愛のダンスと本作のダンスの刻むリズムが同じであるとの研究成果を述べている方もいらっしゃる。
元々、この曲のモデルがドイツにあるお話なので、ドイツには白いツルがいないので、白鳥にしたということになりますけど、それでいいんでしょうか。確かに、考えてみるとアヒルのような骨格の白鳥が器用に踊ったりするとは思えませんが・・・・、謎です。
それと、白鳥の湖は、バレエということで、女性なら内容を知っている人も多いかと思いますが、私はまったく内容に興味がなく、どんな話か、今回楽譜にするまで確認をしたことがありませんでした。要するに、魔法をかけられて白鳥にされた女性が王子様によって、魔法を解かれて人間に戻るという話らしいです。ただ、死んでしまうという悲劇のストーリーと2種類あるというのが特異な感じがします。どうもこんな話が、ヨーロッパ近辺(舞台はドイツ)では、はやっていたのでしょう。
この元となる白鳥の湖はドイツの作家ヨハン・カール・アウグスト・ムゼーウスによる童話『奪われたヴェール』を元に構想が練られ、1875年、ボリショイ劇場の依頼により作曲したものです。1876年に完成しました。バレエが作られたのはロシアですが、物語の舞台は『くるみ割り人形』と同じくドイツです。
チャイコフスキーにとって初めてのバレエ音楽ですが、初演当時は踊り手、振付師、指揮者に恵まれず、評価を得られませんでした。それでもしばらくは再演されていましたが、衣装・舞台装置の破損などからいつしかお蔵入りとなり、その後作曲者の書斎に埋もれていました。
しかし、プティパとその弟子イワノフによって改造がなされ、チャイコフスキーの没後2年目の1895年に蘇演されたという経緯があります。
また、本作品にはワーグナーのオペラ『ローエングリン』(1850年初演)からの影響が指摘されています。善良な人物が悪い魔法によって白鳥に姿を変えられてしまうという筋書き上の共通点や、『ローエングリン』の第1幕第3場で現れる「禁問の動機」と『白鳥の湖』の「白鳥のテーマ」が類似していることや、チャイコフスキーがワーグナー作品の中で『ローエングリン』を特に高く評価していたことが根拠として挙げられています。