【奏法さすらい記】スーパーチョップスのペダルトーンのやり方から見えるピボット奏法との共通点について

奏法さすらい記

 前回、あげた【奏法さすらい記】の記事の続きになります。前回は、ジェローム・カレのペダルトーンの実演ビデオがありました。そして、そのビデオをよくよく見てみると、ピボット奏法に共通する点があると思われるのです。

そのビデオのシーンでは、ペダルCからリップスラーでダブルハイCを吹いて見せます。その瞬間をよく見てみると、トランペット本体の角度が高い位置から、低い位置にずらすのが見られます。これは、やってみるとわかりますが、自然とこうなると思います。しかし、ここで注目したいのが、下唇がカップの中に納まるということです。低音域では、かなりはみ出しているような下唇が、カップの中に納まるような動きをするということです。

【そもそもピボット奏法とは何なの?】
では、ピボット奏法とこの動きとどういう関係があるかというと、トランペット本体の上下動という意味でピボット奏法に似ていると思われます。しかし、もう少し、このピボット奏法を深く理解していくと、そうではないということに気づきました。そこで、ピボット奏法について、ここではもう一度私の理解している範囲のものをまとめていきたいと思います。

まずは、この理論を説いた人は、トロンボーン奏者だったということです。私が50年以上前に、中学生の時にトロンボーンを吹いていました。当時、日本人のジャズ奏者による教則本の中でこの理論を初めて知りました。実際は、アメリカ人のラインハルトという人が、たくさんの奏者の奏法を分析(具体的には、透明なマウスピースの中の口の動きをみて)して、編み出した理論です。

2通りの大きな考え方があります。まず、マウスピースのあてる場所には、個人によってちがい、2つのタイプがあるというのが1つ目の理論です。

【優秀な演奏家でもマウスピースの真ん中になんて当てていない】
マウスピースに対して、真ん中に唇をセッティングされるべきだという当時の常識が間違っているということを主張しました。たくさんの成功した奏者に、この真ん中に口を持ってくるという理論は当てはまらず、それどころか、プロの優秀な演奏家の多くが、マウスピースの上側に唇を当てるものと、その反対に、下側にあてるものがいるということをデーターで証明して見せます。さらに、マウスピースをあてがう唇の位置の違いから、それぞれ、息の流れが違うということを発見します。

マウスピースの上側に唇を当てる人は、アップストリーム(上側に息を吹きかける)で、マウスピースの下側に唇を当てる人は、ダウンストリーム(下側に息を吹きかける)になるといっています。この辺は、歯ならびなどで、変わってきて当然だろうと思いますし、普通の音域ならば、私もどちらでも吹けます。
概要を伝える動画を見つけました。こちらです。興味のある方は、ご覧ください。中ほどにトランペットの例が出てきます。

Brass Embouchures: A Guide For Teachers and Players
話がややこしくなるので、ダウンストリームに話を絞っていきます(アップストリームの場合は、すべて逆になります)。ダウンストリームの場合、高音になるにしたがって、このダウンストリームの角度も下に移動していきます。

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【音域によってあてる位置が変わる】
そして、もう一つは、高音になるにしたがって、マウスピース上を上にずれていく奏者とその逆の奏者がいるということです。ラインハルトは、当初、楽器に角度をつけ、動かすような動きをするという表現から、ピボットシステムという名をつけたのだといわれています。その後、どちらかというと、平行移動するような物言いとなったようです。私が感じるには、平行移動といってもわずかなものです。そして、この移動の時に、楽器に角度をつけるとやりやすくなることも個人的には経験的にわかります。

それを踏まえて、このジェローム・カレのペダルトーンからのハイノートを見てください。一見、楽器の角度をつけて吹いているように見えますが、下唇をカップの中に入れて唇を移動しているのが、わかります。

しかし、これがなかなかできないのです。下唇をカップの中に収めても、上唇が邪魔して、アパチャーが狭まり、音が出ません。そこで、上唇をカップの上側にずらしていくと、うまくいきます。つまり、上記の理屈からすると、これは、ピボットシステムとやっていることは同じということになります。というか、ピボットシステムの中の一つの奏法になるということです(ピボットシステムの場合はいろいろな組み合わせがあます。少なくとも4通りはあるはずで、その中の一つといえます)。

【スーパーチョップスのペダルの例は、万人向きではないかも?】
これですべて解決かというと、そうでもありません。というのは、ピボットシステムが真であるとしたら、ここで紹介したスーパーチョップスのペダルトーンの実演で見せた動きと逆の人はどうするのかということです。つまり、高音域をマウスピースに対して、下にスライドさせるようなセッティングの人については、スーパーチョップスは適当な方法ではないということになるからです。さらに、スーパーチョップスでは一貫して、ダウンストリームを提唱しています。

どんな人にも簡単にトランペットが吹けるようになる方法(ジェローム・カレの言葉)としてのスーパーチョップス、危うし、といえなくもないのですが、ピボットもスーパーチョップスもスーパーらくちん奏法ではないといっていいのだろうと思います。自分に合った方法を自分がうまくいったときのインスピレーションから採用していくのがいいのだろうと思います。

ジェローム・カレのペダルの練習のように、ペダルからのハイトーンはなかなかうまくいきません。というか、初めからあんなに高い音まで出なくとも、チューニングCあたりからやるのがいいのかなあと思って、やっています。半年以内には、ハイCぐらいまで、綺麗に持ち上げられるようになるつもりです。こんな方法もあります。

Claude Gordon Pedal Tones The Kurt Thompson Way
いつものように、英語が聞き取れないので、なんといっているかわかりません。しかし、Claude Gordon Pedal Tonesと表記があり、トランペットの手法の中ではオーソドックスなものを説明しているのだろうと思います。

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