結局、自然体で吹くのがいいのか?part2

奏法さすらい記

さて、前の記事を書いてから随分と時間が経ちました。その間、ぼーっとしていたわけではなくて、試行錯誤を続けていました。新しく見聞きした物事を自分の理解の中に取り組むということは難しいもので、時間が必要です。そして、また少し前進したように感じます。その内容(自然奏法といわれるもの)を説明します。

まずは、前回の奏法の説明です。最初に、トランペットで音を出すときの唇周りの筋肉の使い方を安定的にする方法が紹介されていました。マウスピースを反対側に向けて、スロート部分を唇でくわえるような格好にして、息を吐きだすという練習をしていきます。イメージとしては、ろうそくの灯を消すような唇と息のイメージになります。そして、楽器を持っては、低音域から丁寧に音を出していき、徐々に音域を拡大していくという手順を踏むということです。よく昔言われていた低音域の延長として高音域があるという考え方です(私も子供のころ、これを完璧に信じていましたが、ヒットの延長がホームランになる的な理屈に大人になってから、素直になれなくなりました)。結果的には、この方法のほうが、変な癖もつかず、回り道のように見えて、成果が出やすい方法だということでした。そして、トランペット演奏のときに難しいとされる高音域は、この方法によって克服されるのですが、原理としては、口の開き(アパチャー)を自在に操れるようになることで、すべての音域を苦労なくカバーできるようになるということでした。

とまあ、文章にすると、ひどく簡単ですが、なかなかそうは問屋が卸さない。同じことを説明しているのに、まったく違う表現となることもあるのを覚悟しておかないといけません。だから、自分なりに理解していく(言語化していく)しかないのだろうなと思い、やっています。その中で、最近、わかったことを参考になればと思い、備忘録代わりに記していきます。

まず、マウスピースを逆にしてスロート側からくわえて、息を吐きだすという練習をずっと続けています。これは、結構いい感じです。具体的に言うと、鉛筆を使う口の周りの筋肉強化方法よりも、お手軽で、息を吐くという動作が加わり、より実践的な方法になっているようです。そして、調子が変だなあと思った時にはいつでもそれをやって修正ができるということも、この方法の利点です。以前、ご紹介した鉛筆の方法よりもはっきり言って、数段、楽ですし、イメージしやすいです。

また、アパチャーを調整するということに関しては、正直かなり苦労しました。これもかなり昔から言われてきましたが、はっきり言ってこれほどまでに練習をしたことがありませんでした。よく図解されることがあるのですが、唇の穴(開き、アパチャー)を小さくすると高音域で、広くすると低音域で、ギターの弦の原理で音程が作られるという説明がされてきました。一方、唇の周りの筋肉を唇の真ん中方向に寄せる感じが高音域だという説明も多く見かけます。スーパーチョップスでは主に下唇側の筋肉の周りにその動作をさせるという風になっています。

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何にそんなに苦労したか。『ろうそくを吹き消すような』感じで、息を吐きだすというのがどうもうまくいかないのです。少なくとも、音を出す段階では。唇をすぼめるような感じだと、まるで爺さんが孫のほっぺにキスするときのように、つまりひょっとこのような形になります。そんなんで、トランペットが吹けるとは信じがたいということでした。どう考えても粘膜奏法になっちゃうじゃないかということでした。それでは、唇を巻き込んでろうそくを吹き消す動作だけすればいいのか。これも、なかなかうまくいかない。そこで、マウスピースの位置を四方八方に移動させ、従来の位置より少し右寄りに構えるようにしたところ、うまくいきました。つまり、音程の変化とアパチャーの開け閉めのイメージとが一致するポジションが見つかりました。しかし、そもそもが粘膜奏法、つまり、唇を巻き込んだ分、疲れてくるとこの粘膜部分がひょっこりと、『私を忘れてもらっては困る』みたいに、出てきて、バテバテの状態になり、吹けなくなっていきます。

そうやって時間が流れて、ああだ、こうだとやっているうちに、なんかの拍子に思い付いたのが、唇の意識の場所を変えるということでした。つまり、それまでは、粘膜部分を中心に、そこの開け閉めばかりを意識していたのを、もっと外側の唇と皮膚の境目のあたりにおいてやって、そこを開け閉めするという意識に変えてやってみたところ、かなりうまくいくようになりました。開け閉めという表現が適当ではないかもしれません。上下だけではなくて、横方向も伴うものですので、低音域は大きな楕円、高音域は小さな楕円みたいなイメージで、絞るという感じです。

いま思い出しました。これをなぜ思いついたかということを思い出しました。例えば、トロンボーンなどの大きなマウスピースで楽器を吹くときには、この粘膜奏法というのは、ほとんど意識されません。というか、そもそも唇の赤いところを中心に吹くことなんかできません(超下手な人以外)。人によるのかもしれませんが、私の場合は、上唇に振動を感じながら、吹いていました。その上唇というのは、唇の赤いところというよりもそこから上を振動させるような感じでした。だからこそ、大きな音もだせ、ペダルトーンなんかも吹けるわけです。そう考えてみると、なぜトランペットだけ粘膜で吹く傾向になってしまうのか。それは、マウスピースが小さいということが原因ということもあります。しかし、それ以上に高音域を吹きたいという焦りから、ごまかしの高音がちょっとだけ出る粘膜部分を使ってしまうという罠に陥ってしまうのではないかということです。だから、ここの部分を改めれば、いい音も出るようになり、粘膜奏法も克服できるのではないか。

このことと関連するのが、低音域からじっくりと音域を広げるという上述の練習方法です。これは、何度か触れましたが、昔から言われていることです。この意図するところは、唇の赤いところではなくて、その上の部分を意識して振動させる癖をつけることではないかと私は思います。まさにペダルトーンの練習もこの点を意識してやるべきではないかという風に思っています。ただ、今までにこの低音域をしっかり鳴らすことの延長としての高音域がだせるようになるという理論は、その理由付けがほとんどされていなかった気がします。ほぼ職人の世界の言い伝えのようなものでした。私のような天邪鬼にはどうも従うには?が多すぎでした。まあ、こんなくそへ理屈っぽいことを考えなくても、すんなりとできる人はできているので、それだけ下手だということかもしれません。

ここまで、ああだこうだと長くお付き合いいただきましたが、これって、実はあのチンパンジーの表紙で有名なあの奏法になっていくのかなあという気がします。

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